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z156 (12月01日) 色を使う慣用句(9)


beat 〜 black and blue  「あざができるまで打つ」


直訳: 〜をたたいて黒と青にする
例文: Beating a child black and blue is nothing but child abuse.
子供をあざができるまで打つのは児童虐待以外の何でもない。


black and blue は痣(あざ)を意味します。 だから「日本人は黒い目をしている」を The Japanese have black eyes. とすると「日本人の目の回りはあざができてる」という意味になるので black eyes ではなく brown eyes 「茶色い目」と言い字面通り black eyes とすると両目の回りがあざになっていることを連想してしまうようです。 


一方, 他のゲルマン諸語では「回りがあざになった目」は「青い目」というようです。
ドイツ語 ein blaues Auge
オランダ語  een blauw oog
デンマーク語 et blåt øje
ではこれらの言語で「青い目の人形」のような文字通りの「青い目」を表すにはどうしたら良いのでしょう。 その答えは複数形にしてそれぞれ blaue Augen(ドイツ語), blauwe ogen(オランダ語), blå øjne(デンマーク語)とすれば良いのです。 (もっともこの場合, 両目があざになっていると意味を取ることもできます。)





英語が単語や慣用句に関して他のゲルマン諸語といわば仲間はずれの状態になることはよくあります。 上記の「回りがあざになった目」もそうですが「黒」そのものもまたそうです。

ゲルマン諸語の「黒」
英語 black
ドイツ語 schwarz
オランダ語 zwart
デンマーク語 sort
スゥエーデン語 svart
ノルウェー語 svart
アイスランド語 svartur
英語以外は「黒」を意味する ゲルマン祖語 *swarta- から派生した語です。 英語も古期にはこのゲルマン祖語からできた sweart という語が「黒」を意味する一般的な語でした。 古英語は sweart 以外にもう1つ黒を意味する語として blac があり, 徐々に sweart にとって代るようになりました。
現在も *swarta- の名残りとして英語に残っている語に「皮膚が浅黒い」という意味の swarthy があります。


blac の語源はゲルマン祖語の「燃える」を意味する *blak- で, この印欧祖語は *bhleg- です。  「燃える」が「黒」に変化するのは「燃えた後の闇」からの連想で, 類似した発想の語に古ノルド語の「暗い」を意味する blakkr という語があるようです。


語の起源を遡ると思いがけない語が遠い親戚関係にあるのがわかります。 black の場合も, 印欧祖語の *bhleg- まで遡れば 「炎」の flame や 「燃え立つ,炎」の blaze, さらに「漂白する」の bleach と結びつきます。  flame や blaze は印欧祖語の「燃える」から考えて納得できますが, bleach はなぜ「燃える」と結びつくのでしょう。 どうやら物が燃えているときの光に色合いがないことから bleach が「色抜きする→漂白する」となったようです。 確かにろうそくの炎の中心部を見ると白または青白くなっていて「色が抜けている」という感じがしないでもありません。