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z044 (07月08日) a cock-and-bull story 「ばかげた話,でたらめ」 直訳: オンドリと雄牛の話 例文: All I heard during his speech was his ridiculous cock-and-bull story. 彼の演説で私が聞いたのはただバカバカしいでたらめだけだった。 騙すためか楽しませるためのとりとめのない作り話のこと。 起源については, 以下の怪しげな説を含めいろいろあるようです。 怪しげな説の例1 E. Cobham Brewer という人物の Dictionary of Phrase and Fable(1898)によると cock は concocted 「捏造した」 , bully はデンマーク語の bullen 「大袈裟な」の崩れたものだとか。 手もとのデンマーク英語辞典では bullen の意味は swollen 「膨れた」となっています。 ちなみに英語デンマーク辞典によると a cock-and-bull story にあたるデンマーク語は røverhistorie 「(直訳)泥棒話」というようで, どういう起源か知りたくなる心引かれる単語です。 怪しげな説の例2 イギリスのストーニー・ストラットフォードという町のロンドン通りにある The Cock and Bull という名の宿屋では夜な夜な宿泊客がとりとめのないバカ話をしていたから。 Willam And Mary Morris の Dictionary of Word and Phrase Origins によるとイソップ寓話の昔からヨーロッパには話す動物が文学があり, 中世には bestiaries と呼ばれるジャンルさえあったくらいで, この慣用句もこれを背景に生まれたもので, フランス語の coq à l'âne 「オンドリからロバへ」を英語が真似て作ったのではないか― ということです。 Morris夫妻に限らず, 英語のサイトでは a cock and bull story の起源について必ずと言ってよいほど coq à l'âne を引用しています。 しかし, Morris 夫婦も含め, これが「突然話を変える;脈絡のない話をする」という意味の passer du coq à l'âne 「オンドリからロバへ移る」または sauter du coq à l'âne 「オンドリからロバへ跳ぶ」というフランス語の慣用句の一部であることは触れていません。 さらにオランダ語にはフランス語と同じ意味の慣用句として van de os op de ezel springen 「雄牛からロバへ跳ぶ」があることはオランダ人以外はほとんど知らないと思われます。 フランス語とオランダ語の「突然話を変える;脈絡のない話をする」に英語の cock と bull にあたる語が入っているのはただの偶然なのか, それとも関連性があるのか。 これから先は現在は, 調べようがなく隔靴掻痒の感と言ったところ。。。 「動物(A)から動物(B)へ〜する」という表現で見ると ドイツ語には vom Pferd auf den Esel kommen 「馬からロバに移る」があります。 これはラテン語の ab equis ad asinos transcendere の直訳で, 「落ちぶれる」という意味です。 さて a cock-and-bull story の起源はわかったようなわからないような状態ですが, 最後にこの慣用句を使った文献を挙げておきましょう。 一番古い文献は1608年の John Day という作家による劇 Law-trickes or Who Would Have Thought It にある "What a tale of a cock and a bull he told my father."「彼は父になんてばかげた話をしたのだろう」だそうです。 『マザー・グース』の中には A Cock and Bull Story という歌がありますが, 慣用句の意味とは関係がなさそうです。 『マザー・グース』は 1697年のフランスのシャルル・ペロー(Charles Perrault)が著した Contes de ma mère l'oie を1729年ころに英訳し, さらに英語の歌が付け足されていったのでこの歌が a cock-and-bull story の起源と見るのは苦しいかと思います。 The cock's on the housetop, blowing his horn: The bull's in the barn a-threshing of corn: The maids in the meadows are making of hay: The ducks in the river are swimming away. 「オンドリは家のてっぺんで, ホルンを吹く。 雄牛は納屋で脱穀している。 牧草地の乙女は乾草作り。 川のアヒルは泳ぎ去る。 (私訳) 1759年から 1766年にかけて書かれたローレンス・スターン(Laurence Sterne)の『トリストラム・シャンディ』(The Life and Opinions of Tristram Shandy, Gentleman)という支離滅裂な小説はこの慣用句で終わっているそうです。 L--d! said my mother, what is all this story about? --- A C O C K and a B U L L, said Yorick ---- And one of the best of its kind, I ever heard. 「おやまあ! 母は言った。 これは一体何の話なの? オンドリと雄牛だよ, ヨリックは言った。 しかも今まで聞いたこの手の話の中で一番いいやつさ。 」 (私訳) |