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z021 (06月15日)  「だます」にあたる英語などの慣用句(3)


「2つあるということ」(duplicity, doubleness) は多くの言語で「だますこと」を暗示することがあります。


speak with a forked tongue 「二枚舌で話す」


直訳: 「分岐した舌で話す」
例文: Those who speak with a forked tongue don't notice that they contradict themselves.   二枚舌で話す人は自己矛盾を起こしていることに気付かない。


a forked tongue はヘビのそれのように先が分岐している舌。  この慣用句はアメリカ原住民(インディアン)の慣用表現が起源と言われています。 しかしイタリア語にはこれとほぼ同じ発想の avere la lingua biforcuta 「分岐した舌を持っている」という表現があります。 またイタリア語には他に parlare doppio 「二重に話す」という慣用句もあります。





be two-faced 「相手に合わせて言うことが違う, 二心のある」


直訳: 「2つの顔をしている」
例文: You can't believe what a two-faced person says.
        二心のある人の言うことは信じられない。
 

January の元になったローマ神話の神 Janus (ヤヌス)は2つの顔を持っています。 もともとヤヌスは種まきや収穫などの農事や誕生,就職,結婚などの個人の人生の始まりを司る神として崇拝されていたので, 新しい年の始まりである1月の名前になったのですが, ヤヌスの2つの顔が旧年と新年の両方を見据えていると解釈できるということも, その理由です。


しかし古代人が崇めたヤヌスも2つの顔を持っているということから Janus-faced は two-faced と同じく「二心のある, 偽善的な」という悪い意味で使われるようになりました。  ドイツ語の Januskopf 「ヤヌスの頭=腹黒い人」 やオランダ語の een janusaangezicht hebben 「ヤヌスの顔を持っている=二心がある」などゲルマン系の言語ではヤヌスはマイナスの連想を持たれているようです。 


2つの方向を向いているので「二心ある人」という意味の語に Mr. Facing-both-ways があります。 これはジョン・バニヤン(John Bunyan) が『天路歴程』 The Pilgrim's Progress (1678年) で使った言葉です。 ただしあまり一般的な語ではありません。

 
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