英語慣用句アルファベット順索引 アーカイブス(単語) アーカイブス(慣用句) 音声ファイルがいっぱい! ひとことENGLISH 英語以外の外国語引用索引(主に単語) 英語以外の外国語引用索引(主に慣用句) サイト内検索 |
||
---|---|---|
. | ||
z001 (05月23日) neither fish nor flesh 「得体がしれない」 直訳は「魚肉でもなければ獣肉でもない」。 バリエーションとして neither fish nor flesh nor good red herring 「魚肉でもなければ獣肉でもなければ上質の燻製ニシンでもない」 neither fish nor fowl 「魚肉でもなければ鳥肉でもない」 neither flesh nor fish 「獣肉でもなければ魚肉でもない」などがあります。 最初の英語の記述の記録は1528年で Wone [One] that is nether flesshe nor fisshe という諺として。 さらに good red herring が加わったものは1621年に初出のようです。 これは英語に限らずヨーロッパの諸言語にも同じ表現があります。 ドイツ語: weder Fisch noch Fleisch sein 「えたいの知れない,どっちつかずの」独和辞典(博友社) オランダ語: (noch) vis noch vlees zijn 「どっちつかずだ, どの党派にも属さない,雑種の, 2枚舌の, とるにたらない」 オランダ語の慣用表現を集めたサイトにある定義より デンマーク語: være hverken fugl eller fisk フランス語: n'être ni chair ni poisson 「どっちつかずだ,玉虫色である」 ディコ仏和辞典(白水社) イタリア語: non essere né carne né pesce 「性格がはっきりしない,煮え切らない」小学館伊和中辞典 「のらりくらりする,コウモリだ;どっちづかずだ, 中途半端だ」 現代伊和熟語大辞典(日外アソシエーツ) スペイン語: no ser ni carne ni pescado ポルトガル語: não ser nem carne nem peixe ロシア語: ni ríba ni myáso* 「(人につき)特徴のない, 取得のない」 岩波ロシア語辞典 ドイツ語, オランダ語, ロシア語は「魚肉でもなければ獣肉でもない」。 フランス語, イタリア語, スペイン語, ポルトガル語は「獣肉でもなければ魚肉でもない」。 デンマーク語は「鳥肉でもなければ魚肉でもない」。 オランダ語の慣用表現を集めたサイト(記述オランダ語)には, この表現のオランダ語の引用がたくさんのっており, その中にロッテルダム生まれの人文・神学者のエラスムス(1436?-1536)がラテン語で書いた『格言集』(初版1500年)の引用もあります。 neque intus, neque foris; simili figura dicunt hodie neque caro est neque piscis というのがそれで「内でもないし外でもない。 同じ表現は今日『獣肉でもなければ魚肉でもない』というそうだ」という感じの意味だと思うのですが, そうだとすればこの慣用句は『格言集』が出た1500年頃ヨーロッパで使われ始めたことが推測できます。 ではどの言語が起源になったのでしょうか。 英語の fish flesh ドイツ語の Fisch Fleisch は見事な韻を踏んでいてこれが元になったように思えます。 特に魚肉を考えるとドイツ生まれと言うよりイギリス生まれの方がぴったりするように感じられます。 また『格言集』を執筆していたころエラスムスはパリとイギリスにいたことや, 英語はバリエーションがたくさんあることも英語起源ではないかと思わせます。 ところで日本語には「海の物とも山の物とも言えない」という慣用句があります。 「海の物=魚肉」, 「山の物=獣肉」とすれば neither fish nor flesh そのものです。 ただこの慣用句の意味は「将来どのようになるか全く見当がつかないこと(三省堂故事ことわざ慣用句辞典)」で, 「将来性」に重点ががあるのが英語と微妙に異なるところです。 なお Neither Fish Nor Flesh はテレンス・トレント・ダービー(Terence Trent D'Arby)というバンドが1989年に出したアルバムのタイトルでもあります。 |
||
気まぐれ英単語 アーカイブス(全ファイル一覧) トップ・ページへ戻る |