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055 (般) aisle 「座席の間の通路」 アクセントのある ai は[ei]と発音するのが原則。 この例外は say の過去形・過去分詞形の said で[e]と発音しています。 これで高校初級レベルの知識としてはOKです。 だから本来[eisl]とでも発音すべき aisle が[ail]と発音するのは,綴りと発音の関係に大きな隔たりがあることになります。 どうしてこのようなことになったのでしょうか。 それを紐解くと, aisle がとんでもないトバッチリと勘違いを受けた, 憐れな(?)単語であることがわかります。 aisle の元をたどるとラテン語の「翼」を意味する ala に行きつきます。 これから中世フランス語で建物の翼(ウィング)を意味する aile に派生しました。 14世紀に英語がこれを「教会など建物の翼」という意味で eile または ele として借用し, 最終的に ile [発音はアイル]に変化しました。 ○の部分が「翼」と称すところ。 現代の英語では wing 。 15世紀にフランスで,その語の語源がわかるように単語の綴りを変えようという運動が起きます。 その犠牲になった語の一つが「島」を表すフランス語 ile [発音はイール]。 フランス語の先祖ラテン語の insula が長い時を経て擦り切って ile などという見るも無残な姿になったことを嘆いた学者は, 発音は[イール]のまま,綴りは isle としてラテン語に敬意を払ったのです。 当時のヨーロッパの文化語であったフランス語の綴り字革命は英語にも影響を与えます。 フランス語の「島」の ile --> isle のとばっちりを受けた単語が英語に2つあります。 一つは「島」を意味する ig 。 これが isle に取って代わってしまいます。 この語は現在も[ail] という発音で主に地名や詩で使われ―(例)British Isles ブリテン諸島 Isle of Man マン島―ふつうは島の意味では isle に land を付けた island が使われています。 そしてもう一つは ile 「翼」で, 「島」とは無関係なのにフランス語の ile と同形のためこちらも ile--> isle となりました。 つまり一時期「島」も「翼」も isle だったのです。 しかし,18世紀の半ばまでに「翼」の isle はフランス語の「翼」 aile を真似てさらに発音しない a を付け足して aisle となりました。 (発音は今まで通り[ail]のまま。) ここで aisle の悲劇が終わったわけではありません。 今度は意味の混同が起きます。 今までの話ですと aisle は「建物の翼」で「通路」の意味はありません。 ところが音の似ている alley 「路地」の元になったフランス語 allée の「通路」という意味から混同から起き, 18世紀の半ばまでに aisle が「教会の通路」となり最終的に「建物や車両の通路」を表すようになったのです。 さてフランス語の方はどうかというと「島」は発音通りに ile に戻りました(ただラテン語の s があった証拠として i の上に記号をつけて île となりました)。 「翼」は昔から aile で「通路」は allée ですから,黙字もなくまた意味の混同もありません。 英語の方はややこしい経緯を引きずって綴りも意味もそのまま定着してしまいました。 ここで以上の話をまとめておきます。 本来 ile でよかったのに発音しない s と a を付加し,さらに意味まで変ってしまったことがお分かりになるかとおもいます。 図の中の灰色の矢印はフランス語からの借用・影響を表します。 |
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