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ぶらりボキャブラ散歩
ほぼ日替わり 気まぐれ英単語 


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アトランダムに単語を選択, 時に学校英語・受験英語的に, 時にトリビアにアプローチ。 しかも気が向いたときだけ更新して行く--だから気まぐれ英単語。 
でも単語暗記の手助けになると思います。 兄弟版ひとことENGLISHへと同様,ご活用ください。
(中)は中学生レベルの語, (高)は高校生レベルの語, (般)はその他の語を表します。

                
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026 (般) ) louse (複数形 lice)  「しらみ」 


「はつかねずみ」mouse の複数形は mice。 「しらみ」の louse の複数形も lice で, 単数形の母音字 ou が複数形では i になり, さらに子音字も s が c になります。
これはどうしてなのか。 答えは6世紀ごろに起きた「i 母音変異/転移(i-mutation)」と呼ばれる現象のせいです。 


古英語の mouse と louse は mus と lus (u は長母音)で,その複数形は本来 musi* と lusi* でした。 ところが, 長母音の u のある音節の次の音節に i があると, 長母音の u が y [発音はø] に変る現象が起き mys と lys という複数形ができ, この s がフランス語の綴り方の影響を受け ce になったのです。 


さて 2005年2月のある日の新聞に,  『アフリカ南部ジンバブエのムガベ大統領が,同国を「圧制の拠点」と名指しした黒人女性ライス(Rice)米国務長官を「白人のご主人様(ブッシュ米大統領)の言葉を繰り返す奴隷」と痛烈に批判,さらに 「Rice を Lice(シラミ)と呼びそうになった」とも言ってこき下ろした。』と書かれていました。 
これを読んだとき, 私は[r] と [l] は日本人以外の民族でも同じように聞こえるのだろうかと関心を持ちました。


[r] と [l] の区別がない言語の代表は日本語と韓国語それにハワイ語です。 それくらいは私でも知っていました。 ひょっとしたらジンバブエの言語も同類かもしれない, と思いジンバブエの公用語の一つショナ語で書かれたホームページ(ショナ語辞書の前書きのページ)を覗いてみました。 そして私は快哉を叫んだのです(というほどではないが)。
上記のページを見るとわかるとおり r はあっても l がありません。 ショナ語を話す民族も [r] と [l] の区別はつけていないのです。 だから上のような, 日本人がクスッとしてしまうムガベ大統領の毒舌が生まれたのです。


r で表記される音は各言語, さらに地方によって個人によって差がある, ある意味で不安定な音です。
例えばイギリス人は heart, girl, turn など母音字+r の音節では r は発音しないけれどアメリカ人は舌を口の中で丸めます。 また,フランス人は喉びこを振るわせ, イタリア人やスペイン人は語頭の r は巻き舌にし, 中国人はそり舌にします。 


そもそも r は子音なのか, という問題があります。  [r] を [w] や [j] と同じく半母音に分類する学者もいて, 事実, 教科書や辞書にはそのように記されているものもあります。
ちなみにスラブ系の言語の中には r が(半)母音化しているのもあり, たとえばチェコ語の早口言葉に Strc prst skrz krk.  「指を喉に入れろ」 などというのもあったりします。 (strc の c はチュ音でこの上にカギがある字ですがそのフォントがないので表記できません。)


[r] は [l] の違いは子音と半母音の違いとして教えると, [r] と [l] の区別の苦手な日本人には都合がいいかもしれません。  [r] は [w] に近く母音が続くと口が動いてしまうのが [l] と違います。 つまり ウァ, ウィ, ウェ と発音するためには, 口をつぼんでウと発音してからそれぞれ ア, イ, エの口形に移動します。 これを意識させてから舌を口の中で浮かせて ラ, リ, レ と発音すると英語の [r] 音が認識できます。
一方, [l] の方は口が動きません。 舌の先が上の歯茎の裏に押し付けて ラ リ レと発音し, 口は ア, イ, エの口形のまま動きません。
口が動くか動かないか。 この区別に注目させて中学生の初級英語で [r] と [l] の聴き取りテストをすると100%当ります。 
が, 現実はやはり甘くはない。 まず第一にリスニング・テストは口の動きが見えないテープの形でなされます。 そして2つ目の問題は [bl] [br][pl][pr][kl][kr] など子音と続く場合は, たとえ話者の口を動きを見ることができても, 見た目がほとんど同じくなって判断するのが難しくなることです。 


[r] と[l]の区別をつけるには, 単語を一つ一つ覚えて耳で聞こえる文脈から「あ,これはご飯(rice)だな」「あ,これはシラミ(lice)だな」とするのが現実的な対処法になるのかと思います。 ただライス国務長官のような固有名詞や未知の語の場合, これは有効ではありません。 
少なくともあの方はシラミ国務長官でないことは確かなようですけれど。


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